厳しさの中にある優しさ
次のようなネット記事を見ました。
【イチローも警鐘を鳴らした「大人に叱ってもらえない」Z世代が直面する「やさしさという残酷」】
少し長くなりますが、イチロー氏の言葉を引用します。
「今の時代、指導する側が厳しくできなくなってきた。僕が初めて高校野球の指導にいったのが2020年の秋、智弁和歌山だね。このときすでに智弁の中谷監督もそんなこと言ってた。部員に厳しくするのはなかなか難しい、と。でもこれは酷なことなのよ。高校生たちに自分たちに厳しくして自分たちで上手になれって、酷なことなんだけど、でも今そうなっちゃっているからね。（中略）でも生徒たちは、自分たちで厳しくするしかないんですよ。以前は、遊んでいても勝手に監督・コーチが厳しいから全然できないやつがあるところまでは上がってこられた。やんなきゃしょうがなくなるからね。でも、今は全然できない子は上げてもらえないから。上がってこられなくなっちゃう。それ自分でやらなきゃ。なかなかこれは大変」・・・と様変わりした現代では、選手がより自身を律することが求められる過酷さを指摘した」
（2023年11月6日、スポニチアネックス【イチロー氏 「指導する側が厳しくできない」時代の流れ 「酷だけれど…自分たちで厳しくするしか」】より引用）
https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2023/11/06/kiji/20231106s00001002555000c.html#goog_rewarded
今の教育環境において、「厳しい指導はできない」といった議論がありますが、イチロー氏は厳しく指導できないことは、生徒にとって「酷なこと」、残酷であると述べられています。
たしかに昔のような理不尽な厳しさや体罰などといった行き過ぎた指導を受けずに済むことは、生徒たちにとって良いことです。
しかし、厳しい指導があった時代には自分を厳しく律することができない生徒でも、大人の指導によって自分の能力を一定の水準まで高めることができたという事実もあると思います。
厳しい指導ができなくなると、「自分で自分を厳しく律することができない（コントロールできない）生徒は、誰からも指導されたり、正しい方向に導いたりしてくれなくなる、つまり放置される」可能性もあります。その結果。自分を律することができる生徒はどんどん成長するし、できない生徒はずっと成長が止まったまま放置されることになってしまいます。その差は広がっていく一方です。
トラブルにならないように、生徒にストレスを感じさせないように、「やさしく」教育するということは、果たして本当に生徒のためなのでしょうか。
教育において、ある程度の「厳しさ」や「ストレス」は、成長のためには必要なことだと思います。
もちろん、体罰や暴言など、行き過ぎた、理不尽な厳しさは絶対にあってはなりません。
しかし、その生徒に応じた、「厳しさ」や「ストレス」は、生徒の成長を願った教育ではないでしょうか。
トラブルや生徒の不快感を避けて生徒の改善すべきことを伝えない、ということは大人の責任を果たしてないとも考えることができます。「やさしく」するばかりだと、生徒たちの成長の可能性を潰してしまっていることがあるということを、私たち大人もよく考えていく必要があると感じます。
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